小鬼田平乎の宣ひたるも露知らず

宣わんとやってられんのでね

或る男の認知療法

ある所に一人の男がろくに防音設備も整っていないアパートに住んでおりました。
その男は友達と呼べる者もおらず、どこぞの馬鹿みたいに友達を呼んで馬鹿騒ぎをするという事もなく、リモート飲み会をする訳でもなく、自炊する程度で慎ましく暮らしておりました。
しかし、そんな平穏な生活も長くは続かず隣に越して来た初老の男性のおかげで男の精神をも脅かす事態となってゆくのでありました。

越して来た隣の初老の男性は少しでも自分の気に喰わない音が聞こえると容赦なく即座に攻撃をしてきました。
それに加えて一人でブツブツ喋っていたり高笑いをしたりとそれはもう目も当てられない程でした。

そして、上の階にも何やら曰く付きの男性が住んでおり前々から攻撃はして来るもののそうひどい攻撃ではありませんでした。
しかし、隣の初老の男性が越してきてからというものその攻撃の度合いが酷くなりました。
どうも、隣の初老の男性のこちらを攻撃する音や喋る声、高笑い、部屋の外に出て煙草を吸う度にゲホゲホ咳き込む音をこちらがやっているのだと勘違いして攻撃しているようなのでした。

その男はなぜか音を出す自分が悪いんだと刷り込まれ更に思い込み、色々出来る限りの事をしました。
しかし、攻撃は止みません。
男はこれ以上どうすれば良いんだと悩みどんどん追い込まれていくのでした。
でも、自分の人生を台無しにするほどその男は馬鹿ではなかったので認識を改める事にしたのでした。

「自分は生きている生活をしているから音が出ている訳で攻撃される謂れはない」と。

隣の初老の男性は今までの諸々の事を総合的に判断するとアルコール依存症の可能性が高いと思われました。
アルコール依存症になると脳が萎縮しその影響は前頭葉にも及び善悪の判断や自分の行動の制御、その他諸々の事に影響が出てくると言われています。
だから、自己中心的になり自分の気に喰わない音が聞こえてくるとすぐカッとなり攻撃をしてくるのでしょう。
そう、ただそれだけの事なんですね。

上の階の男性はと言えば、今までの行動を総合的に考えてみると発達障害又はそれに類する障害を持っている可能性が高いと思われました。
仮に発達障害だとすると自分が考えている事ややっている事が正しいと偏った考えになりそれに固執し他人の言う事には耳を貸さない。
更には攻撃的になりやすい。
前頭葉にも何等かの問題があるのでしょう。
だから、自己中心的になり自分の気に喰わない音が聞こえてくるとすぐカッとなり攻撃をしてくる。
そう、ただそれだけの事なんですね。

男はそう考えを改める事にしてこれからもそのアパートでいつも通りに音を出して生活していこうと心に決めたのでした。

つづく(かも)

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